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奥三河の農耕儀礼

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人生の通過儀礼2・元服
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果樹の話6・梅と梅干2
果樹の話6・梅と梅干1
果樹の話5・橙と注連飾り
果樹の話4・柚子
果樹の話3・桃
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果樹の話・柿1
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野菜の話 4.カボチャとゴボウ
野菜の話 3.茄子
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野菜の話 1.大根
作物の話 8.大豆の話 2
作物の話 7.大豆の話 1
作物の話 6.蕎麦の話
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作物の話 4.粟
作物の話 3.稗
作物の話 2.里芋
作物の話 1.里芋
動物物語4「神の使者たち」
動物物語3「神の使者たち」
動物物語2「神の使者たち」
動物物語1「神の使者たち」
講の話『庚申講』3
講の話『庚申講』2
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食の文化 2
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峠の伝説 4
峠の伝説 3
峠の伝説 2
峠の伝説 1
馬の話 3
馬の話 2
馬の話 1
 
 お犬信仰3

▲下吉田字大沢の下所の碑

 日本には、お犬信仰といい、山犬(狼)を神獣として祀り、護符にお犬の姿を印刷する神社がある。その代表的な神社は、福島県の山津見、埼玉県の三峯、浜松市の山住、山梨県の金櫻、京都府の大原、岡山県の木野山らである。上記の神社は、背後に広大な山地があり、農民は農作物の害獣除けの祈願をした。
 お犬の信仰は、お札を青竹に挟み田畑に立つと害獣除け、戸口に貼れば赤子の夜泣き封じと魔除け、祈祷をすれば「憑物落し」になるとの俗信がある。憑物は憑依といい、動物の霊は人を発狂させると恐れた。未開社会では、人に憑き精神異常をおこす動物霊は、治療薬はなく祈祷のみが治ると信じた。祈祷は、山中で厳しい修行をした山伏の「稲荷行者」に依頼した。精神異常者は、現代の精神病理学では、先天的異常性格と認定されている。
 憑物信仰は地域差があり、全国で異なる。民俗学書では、憑物の狐の呼び名は、東北は飯綱、北関東は尾裂・御先狐、中部地方は管狐・クダショウ、奥三河は尾虎狐、中国と四国では憑物狐・トンべ、南九州は野狐とよぶ。中国地方の西南部、九州と四国の一部は犬神を恐れる。犬神信仰は大陸より伝わり、近畿地方の以西に流布する。狐と犬のほかの憑物は蛇、狸、猫、貉、河童、蝦蟇蛙などがある。
 憑物信仰の伝承は、昔は僻地が盛んだった。昔は狐持とよばれクダショウ・管狐を飼う家があり、居場所は納戸の竹筒といわれた。管狐は飼主しか見えず、大きさは鼠ぐらいで、小判を銜えて来るので家は身代を増し長者になる。飼い方が悪いと狐は逃げ出し、たちまち貧乏人になるといわれた。中世、近世初頭には、管狐や犬神を駆使する人を恐れ、差別や村から追放をした例がある。そのような非科学的な偏見は、昭和になって是正された。
 奥三河の昔話は、狐や狸が人を化かす話が多い。狐と狸は、イヌ科の中型獣である。化かし方は、狐は変装が巧みで美女に化け、若者と酒を飲み、酔って裾より尾が露見したとか、木の葉を小判に変え支払をした話がある。狸は妖怪に化け、大音を出し驚かすなど愛敬のある化け方が多い。僧の姿になり旅をして筆跡を残し、大酒を飲み正体が露見した話がある。
 狸の出す大音は山崩れ、雷鳴、祭囃子などであるという。昔は林業従事者が里から離れた山中に出小屋を建て、宿泊しながら作業したが、山崩れの音で逃げ帰った話もある。狸の特技は腹鼓を打つ「狸囃子」で、夜の谷間に祭をしているような錯覚をするという。江戸時代の江戸の番町の七不思議は、狸囃子で夜ごと笛、太鼓の音が聞こえたといわれる。
 民俗学書では徳島県、香川県、岡山県、淡路島では狸も管狐と同様に人に憑き体を弱らせると恐れられている。岡山県美作地方では、人に憑く狸はトマッコといい15pほどの狸であるが、上手に飼えば金持ちになり、機嫌を損なえばたちまち貧乏になるという、管狐と同じ信仰がある。
 私は少年時代に、故郷の佐久間町の猟師に狸の話を聞いた。猟師は豊橋の筆屋に依頼され、筆の材料の狸の毛を専門に猟をする者がいた。狸は溜糞といい、同じ場所で糞をするので、糞を見つければ捕獲できる。狸は小心で気が弱く、捕えると気絶し死んだふりをする。死んだと思い気を許すと、正気に戻り逃げ出し、猟師さえ騙すという。狸のイメージは滋賀県の信楽焼のポンポコ狸のように、腹と睾丸が大きく大徳利をもち、大酒飲みといわれる。世間には狸親父という言葉があるが、狡猾な老人を罵る言葉で狸の評判は悪い。
 奥三河のクダショウ(管狐)について、民俗学の泰斗の林正雄先生(新城市海老)より、新城市下吉田字大沢に「下所」とよぶ狐の碑があると連絡があった。「鳳来町下吉田大沢部落について」(著者、藤原武司)に下所の碑の写真と祭祀の解説がある。下所は、クダショウとも読む。大沢はかつては十数戸の家があったが、今は四戸に減った過疎地だ。下所の碑の祭祀は、旧正月に碑の四方に女竹を立て、竹に糸を張り、注連縄を張り餅を奉納する。その際「狐様、この中にいて出ないでください」とお願いをする。昔は竹の管に糸を通し、祭祀をしたとの説もある。

 下所の碑はかつて耕作した棚田の下部にあり、古代は稲の神を祀るため塚を築いた「狐塚」のような信仰と推測できる。大沢の住民、藤原幹雄氏の案内により、私は碑の調査に行ったが、氏の手助けにより急な山道を登り下りした。藤原氏の御助成に心より、感謝する。


文:新城市平井  伊東 文弘 絵:新城市大海  前田 百合子



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